プログラム概要

 東北大学原子核物理研究室ストレンジネスグループは2000年より米国ジェファーソン研究所においてハイパー核の電磁生成分光研究を強力に推進してきました。従来、KEK-PS(つくば)やBNL-AGS(米国)において、中間子ビームを用いて精力的に研究されてきたハイパー核反応分光ですが、高品質な電子ビームを用いることにより、より高エネルギー分解能で研究を行うことが可能である事が我々を中心とする国際共同研究グループ(HNSS, E89-009実験)により証明されました。  当初、電子線バックグラウンドの多さから実現が難しいと心配されたハイパー核電磁反応分光ですが、ジェファーソン研究所の良質な電子ビームを用いることにより可能であることが証明されたため、我々はハイパー核電磁生成に特化した高分解能K中間子スペクトロメータ(HKS)、高分解能散乱電子スペクトロメータ(HES)を特別推進研究(H12-15 「電磁プローブによるラムダハイパー核の研究」)、学術創成研究(H16-21 「電子線ビームによるハイパー原子核分光研究の展開」)の下で進め、ハイパー核精密電磁生成分光という新しい学問分野を確立、発展させてきました(E01-011, E05-115, HKS-HES collaboration)。

右図は2009年JLab Hall-C 実験室にてE05-115実験を行った際に東北大が製作したHKS, HESの二つのスペクトロメータと新設したシケインビームラインが完成した時の写真です。

 ジェファーソン研究所の電子線ビーム以外では不可能であったこの研究は、我々の第一世代実験の成功の後、イタリアを中心とする別の国際共同研究グループも独立にジェファーソン研究所で研究を開始し軽いハイパー核に関し成果を上げてきました。
 また、近年マインツ大学におけるMAMI-C 加速器のアップグレードにより同様の研究をドイツにおいて展開できる可能性ができました。このため、我々は研究をジェファーソン研究所、マインツ大学の両面において展開しつつあります。

 

 

 

左図はマインツ大学MAMI-CにおけるKaOSスペクトロメータ(中央紫色)と常設のSpek-A,B,C(赤、青、緑)です。ハイパー核実験ではKaOSスペクトロメータを、崩壊π分光ではKaOSとSpek-A, B もしくはCを組み合わせて使用します。

 

 現在、ハイパー核電磁生成分光のさらなる発展、および研究の次の段階として国際共同研究グループを強化し、電磁生成したハイパー原子核の崩壊から生じるパイ中間子の精密分光研究をジェファーソン研究所およびマインツ大学で推進しています。この研究によりハイパー核を電磁生成して分光するという研究を継続、発展させると同時に、生成分光という段階からステップアップし、電磁生成したハイパー核の崩壊生成物を精密分光するという新しい研究手法の確立を目指しています。  このためには、米国ジェファーソン研究所が持つCEBAF加速器から得られる高品質電子ビーム、ドイツマインツ大学MAMI-Cにおけるフレキシブルな電子ビームおよび、我々東北大学グループが持つハイパー核電磁生成分光に関する経験の全てを活かすことが、ハイパー核分光研究を発展させる国際戦略において欠かせません。
 米国、クロアチア、アルメニア、イタリア、ドイツという国際共同研究グループの若手研究者が協力して実験準備を強力に推進していく中で、日本の若手研究者が海外の研究施設に長期に滞在し、強力な存在感を示すことは国際共同実験の中で、これまで通り日本グループが主導的に研究を進める上で重要であると同時に、一流の研究施設に各国から集まってきている優秀な若手研究者の中で切磋琢磨することが日本の若手研究者の研究能力をレベルアップさせる上で極めて重要であると考えます。
  このため、本プログラムでは日本の若手研究者をジェファーソン研究所、マインツ大学に長期に滞在させることにより主導的に研究を推進し、主研究担当者、研究担当者が随時ジェファーソン研究所、マインツ大学に出張し、現地において状況確認、若手研究者の直接研究指導および、国際共同研究の調整を海外研究者と協力して行います。
 本プログラムでは、これまで東北大が培ってきたジェファーソン研究所におけるハイパー核国際共同研究体制を、日本から派遣する若手研究者を中心とするネットワーク上に展開し、将来、国際的に活躍することが期待できる研究者を育成することを目的としています。


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