研究計画

 我々の世界を構成する通常の原子核は、u,d クォークから構成されます。一方、ハイパー原子核は s クォークを核内に持つ原子核であり我々の回りには自然には存在しません。このハイパー核を人工的に生成し研究することにより、核子-核子間相互作用である核力を SU(3)対称性を基本としたバリオン力に拡張し広い見地から理解することが出来ます。また、原子核は地上で最も密度の高い物質ですが(1ccあたり2億トン以上)、その原子核の中心近くという極限状況下で、Λ粒子というバリオンがバリオンという粒子として存在しているのか、それとも粒子としての境界が曖昧になりクォーク多体系として理解する必要があるのかという問題の解決にハイパー核研究が役立つと期待されます。平均場近似は比較的重い原子核の研究において大きな役割を果たしていますが、核子を原子核内でクォークレベルではなく核子として取り扱う事の妥当性を吟味することは極めて重要な研究テーマです。

 従来、ハイパー原子核の研究はつくばのKEK-PS, 米国 BNL-AGS において、π、K中間子ビームを用いて精力的に進められてきました。新たに東海に完成したJ-PARC ハドロンホールににおいても中心的な研究テーマとなっています。

 東北大学理学研究科原子核物理研究室ストレンジネスグループは2000年より米国ジェファーソン国立研究所(JLab)において奇妙さ量子数(ストレンジネス)を原子核中に電磁生成し、(e,e’K+)反応を用いて精密分光するという独自の方法によりΛハイパー原子核の研究を進めてきました(E01-011, E05-115 Spokespersons : 橋本、Tang, Reinhold, 中村)。通常の中間子ビームを用いるのではなく、JLab の高品質電子ビームを用いるという新しい研究手法に加え、我々が設計、製作した高分解能K中間子検出器(HKS), 高分解能散乱電子検出器(HES)を組み合わせることにより、”電子ビームを用いたハイパー原子核精密分光”という学問分野を創始、発展させてきました。
 さらに、これまで我々が発展させてきたハイパー核を電磁生成して研究するという手法に加え、生成したハイパー核の弱崩壊から生じるπ中間子を精密に測定、分光するというまったく新しい研究手法を開発することを目指し、我々はJLab およびマインツ大学の高品質電子線を用いた実験を計画しています。


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