研究紹介
   短寿命核ビーム物理では、原子核反応によって作られた短寿命核を用いた実験により、 宇宙で起きている元素合成反応の研究や、短寿命の原子核の核構造の研究を行っています。

宇宙核反応の研究

   宇宙における元素合成過程の研究は宇宙の進化のメカニズムや諸現象の解明に重要です。 水素原子核(陽子)はビッグバン直後に起きたQGP相転移で作られました。 その後に起きたビッグバン元素合成により重陽子、ヘリウム3,4、リチウム6,7などが作られました。 炭素より重い元素は恒星、新星、超新星、中性子星合体等で作られたと考えられています。 しかし、右図に示した太陽系の元素の相対組成の観測値はまだ元素合成計算では再現出来ていません。 この原因の1つは、元素合成に関する原子核物理のデータが不足していることにあります。 本研究室では、宇宙で起っている元素合成反応の中で重要は反応を選び、その反応を実験室で測定し、その起りやすさ(反応断面積や反応率)を決定しています。 現在は、ビッグバン元素合成における宇宙リチウム問題に関する研究の研究を行っています。 これはリチウムの観測値がビッグバン元素合成モデルの予想値の1/4〜1/3しかないというもので、ビッグバン元素合成におけるの最重要課題の1つとなっています。

新同位体探索実験

   自然界で10-9秒以上の寿命を持つ原子核は、陽子と中性子から作られています。 自然界で安定に存在する原子核は約300種あります。 理論計算では10-9秒以上の寿命を持つ原子核は約10000種あると考えられていますが、これまでに存在が確認された原子核はその1/3です。 超新星などで起きている元素合成過程(早い中性子捕獲過程、r過程)で通る原子核の多くも存在が確認されていません。 私逹は、未知の原子核を生成し、その性質を調べています。 また、効率良く新同位体探索を行うため、より正確なエネルギー損失計算コードの計算手法の確立やシミュレーションコードの作成を行っています。

原子核構造の研究

   短寿命の原子核の中には、安定な原子核がもっている魔法数が消失したり、安定核と異なる数が魔法数となっている原子核があります。 原子核反応で短寿命核を励起し、その脱励起時に放出されるγ線や崩壊時に放出される陽子や中性子などを測定することで、短寿命核の構造や形状などを調べています。