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** 研究室選び [#r0bc9fdf]

多くの大学では4年生になると研究室配属があり、研究室のメンバーとして扱われます。
たまに、研究室配属がないところもありますが、それはまれな例外なのでこの際忘れましょう。

その研究室で一年過ごすわけですし、そのまま大学院に進学したときに博士課程(前期)で2年、博士課程(後期)で3年あるいはそれ以上過ごすので、研究室選びは重要になります。
卒論を書く際にどんな研究を行ってまとめるかという問題がありますが、たいていは「こんなのやってみない?」と指導教員の方から提示されます。
しかし、おまえはこれをしなければ卒業させないというような押しつけはありません。

また、学生の方から「こういうことがしたい」と言って採用されることも無いわけでは無いでしょうか、殆どないでしょう。
学部生が授業で学んだことは確立された学問であり、学ぶという姿勢はあっても、研究するということは多くの場合身についていません。
また、最先端の研究は先人の積み重ねの上に成り立っている訳ですから、それらの知識がないと研究はできません。
学部での授業の内容は基本的に100年前の物理ですから、そこから最先端まで大きな山があることは想像に難くないでしょう。

少なくとも、自分が知っている範囲では上のような感じですが、実際はどうでしょうか。
卒業研究のテーマをどのように与えられてどのように選ぶことが出来るかは、その研究室の教員によるところが大きいはずです。
そのため、研究室の雰囲気を知るのが一番です。
どんなに興味のある研究をやっていても、辛い日々を過ごし苦行になってしまってはしょうがないでしょう。

最近は、折りに触れて研究室紹介が行われています。
そのような機会に紹介を聞きに行くところから始め、興味をもった研究分野の研究室を訪問することを勧めます。
スタッフに話を聞くだけではなく、そこに所属している4年生や大学院生に話を聞くことも重要です。
自分に都合の悪いことを自ら言う人は、普通いません。
また、どんなに良いと思える人でも、自分の評価と他の人から見た評価は変わってきます。
多角的に見た情報を元にすることが重要です。
特に他大学を受けようとする場合、授業でその教員を見る機会というものがありませんから、同じ大学から受ける人とは必然的に情報量が少ないので、積極的に情報収集をすることが必要となります。

同じ大学の大学院を受けようとする学部の学生さんが、4年生で配属された研究室や研究グループにそのまま残ろうとした場合を考えます。
時々、間違った噂が流れているのですが、今その研究室にいるからと言って、大学院で確実にその研究室に行けるわけではありません。
大学院入試の成績が悪く、他に成績の良い人が多数その研究室を希望すれば、当然順位が落ちる訳で結果としてその研究室には行けなくなります。
今その研究室にいることは既得権益ではありません。

筆記試験が行われた後に面接がありますが、ここではその人の適正を見ているはずです。
東北大の物理では、面接を行うのは講師以上なので私は面接に参加したことがありません。
指導教員になることが出来る人(=講師以上)が面接を行っているので、ここから先に述べるのは自分が考える大学院生としての適正になります。

実験系の研究室では、自分で実験装置を作り測定することを避けて通れません。
素粒子実験の巨大なコラボレーションに参加している研究室では、すでに誰かが作って測定装置を使い、誰か収集したデータを解析するだけだと思うかもしれませんが、そのような場合でもその研究室で次世代の実験に向けた検出器のR&D(研究開発)を行っているはずです。
どんな場合でも、物を作って動かすということが必要になります。

学部までは、教科書を呼んだり講義を受けたりして勉強することがメインですが、卒論研究の段階でもそうですが大学院では自分で考えて物を作るという機会が増えます。
増えるというより、それが中心となることの方が多いでしょう。

時々そういう学生さんに出会うのですが、検出器や装置を設計したり制作したりすることがちっとも楽しくなさそうな人がいます。
それなら何で実験系の研究室に来たんだろうと思うのですが、よく分かりません。
理論の研究室に行きたかったけど、成績が余りよくなくて引き受けてもらえなかった場合もあるでしょう。
あるいは、自分で物を作る機会を子供の頃から持つことがなく、何がどう楽しいのか分からないのかもしれません。

「この装置を作って測定したら、こんなおもしろい物理が見えるよと」動機付ければよい、とある人に言われましたが、その物を作る過程が楽しめない人が遠い先までモチベーションを持っていけるのかは、個人的には疑問です。
日々のちょっとしたことに楽しみを感じることが重要ではないかと思います。
ゴールにたどりつければいいのですが、途中で倒れた場合、苦行の記憶だけ残るというのは当人もいやでしょうし、一緒にやっているこちらとしてもうれしくありません。
物作りに喜びを感じることが出来てなおかつ物理にも興味がある、そんな人が実験系の研究に向いているのではないでしょうか。

あと重要なのは、人と話が出来ること。
実験は一人で行うわけではないので、複数人で協力して行います。
そこで、コミュニケーション出来ないと何も進みません。
最初は分からなくて当たり前なので、どんなことでも質問して聞いて行くことが重要です。
もちろん、「仏の顔も三度まで」ということもありますので、聞いたことはきちんとメモを取るなりしましょう。

理論系の研究室については、私は「バイバイ」と言われた立場なのでよく分かりませんが、個人的には中途半端な秀才では行くと辛いのではないかと思います。
学部の授業の成績が良いことだけの「お勉強の出来る人」は、向かないような気がします。
なので、理論の研究室に行きたかったんだけど、引き受けてもらえなかったので実験の研究室に行くということが多々あります。
自分もその一人なわけですが、物を作ることが好きだったことと、物理がしたいというより「研究が好き」だったことが幸いしていのでしょう。


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