RHIC・PHENIX実験におけるpi0 A_LLの測定


2003年4月〜5月にかけてアメリカ・ブルックヘブン国立研究所のコライダー型加速器
RHICで進行方向に偏極させた陽子同士の衝突実験を重心系において200GeVのエネルギー
で行いました。京都グループが参加しているPHENIX実験では陽子内のグルーオン偏極度の
決定を目標の一つとしており、そのための手段の一つとしてinclusive pi0のA_LLを
測定しました。

inclusive pi0のA_LLは
・「ヘリシティ+の陽子とヘリシティ+の陽子の散乱でpi0が生成される断面積」
・「ヘリシティ+の陽子とヘリシティ−の陽子の散乱でpi0が生成される断面積」
の2つの断面積の非対称度です。重心系200GeVといった高いエネルギーでの偏極陽子衝突
は世界で始めてであり、pi0 A_LLもこの実験で始めて測定されました。




上の左図はPHENIXの検出器を上方から撮影したものです。ビームは画像の下と上から
入射し、画像の中心付近(筒状の検出器の中心)で衝突します。pi0(から崩壊した2つ
の光子)を測定するのに主要な役割を果たしたのがこの画像の青色の部分の
電磁カロリメーターです。(筒の一番外側の部分)
上の右図は陽子陽子衝突のイベントディスプレイであり、一番外側の紫色の部分が
電磁カロリメーターを表しています。










Polarization scale error δP〜30% :
is not included

Analyzing power A_N(100GeV)〜A_N(22GeV)
is assumed

δP〜30% : conbined stat. and syst. error
for A_N(22GeV) (AGS E950)

ALLの測定結果はこのようになりました。実験データとともに4種類の理論曲線を
描いてあります。
pi0のA_LLがわずかに負の値をもつことからグルーオンの偏極度は
マイナスである可能性もありますが、低いpTの領域でのperturbative QCDの
正当性に対する問題などがあり、断定することはできません。pi0のA_LLのデータだけ
ではなく、荷電pionのデータ、direct-photonのデータ等と比較し、総合的に考察する
ことが必要であると考えています。