大学院・研究者を目指す人へ†研究に必要とされるスキル†研究をする上で必要な能力は何でしょうか? 小学校、中学校、高校、大学で行われている教育は「授業」の形式です。 「わざ」を「さずける」という字が意味するように、確立されたものを系統的に教えられるのが授業です。 つまり、すでに誰かが分かっていることについて知識や技術・技能を身につけることになります。 一方、誰も知らないことを探求するのが研究です。 従って、研究に必要なスキルと勉強する(試験で良い点を取る)スキルは全く違います。 勉強だけ出来る、たとえば記憶力が良いとか、は無いよりはましですが、それだけで研究に向いているかどうかは分かりません。 物理は数学を道具としている学問です。 数式の計算方法や展開方法を非常に良く記憶していれば、ある方程式からある条件でのもとでの物理現象を導くことは可能でしょう。 しかし、その物理現象のイメージがわかないようでは、数式は解けても現象そのものが理解しているとは言えません。 大学院入試でも、理論の研究室は面接の段階で物理がきちんと理解出来ているかどうかその場で問題を出して解かせるそうです。 これは、偶然院試の問題が解けてしまって良い点になったかどうかを見ているということです。 別の所にも書いていますが、お勉強が出来るだけの人では理論の研究はやって行けないのです。 そして、それによって学生・教員双方が不幸になることを未然に防いでいます。 実験の研究をやっていくうえでは、最低限の物理の素養を身につけていること以外に他にも必要な能力があります。 一番重要なのは、
です。 素粒子・原子核の実験の場合には、その研究室だけではなく、他の大学・研究所の人々と一緒に実験を行うことが普通です。 それも国際共同実験になることが多いので、日本語で人とコミュニケートすることのみならず英語によるコミュニケーションに拒否感を持たないことが期待されます。 外国なんか行きたくない、英語でなんて話したくない、と頑なに自分の狭い世界に入られると、ちょっとこまったことになります。 実験データを収集するには、回路モジュールを組んでコンピュータを使います。 データを解析するには、自分でプログラムを書く必要があります。 そのため、
を身につけてもらわないとどうしようもありません。 検出器を自分で設計して制作することも多々あることから
も必要になります。 研究室配属までに身についていれば非常に良いのですが、研究室配属後でも十分間に合います。 何となく苦手だからと、何もせずにずるずると先延ばしにしていくと最後に大変なことになるでしょう。 我々の分野では、強制的にあれをしろこれをしろと学生に言うということがあまりありません。 学生の自主性に任していると言えば聞こえはいいですが、放任しているという言い方もできます。 しかし、研究とは本来その人の自主的な興味に基づいて行うものなので、授業の様にあれこれしろというのは間違っている、という感覚が私にはあります。 研究者を目指す学生は、自分で研究できないとどうしようもありません。 博士課程修了後就職するつもりの人でも、研究する能力がないとそもそも博士号を取ることは難しいでしょうし、就職も中途採用あつかいになることから大変でしょう。 修士で卒業し就職するつもりでも、修士号を取るからには研究しないとやはりだめです。 |